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医療マネジメントセミナー(平成26年度第2回)~病院のブランド戦略を考える~

「病院のブランド戦略を考える」
第2回医療マネジメントセミナー


 滋慶医療科学大学院大学と滋慶医療経営管理研究センター主催による「医療マネジメントセミナー(平成26年度第2回)」が6月22日(日)に、大阪市淀川区の同大学院で開かれました。米延策雄・同大学院教授(以下米延氏)は「経営手法としてのブランディングの試み~病院経営の考え方」と題して、中西匠・エスプロデューサーズ取締役(以下中西氏)は「医療のブランディングの重要性」と題して、それぞれ講演を行い、病院のブランド戦略について問題提起しました。




―最大の経営資源は人材―


 米延氏は、「病院の最大の経営資源は人材」と明言して、病院経営に共通する特徴として、以下の項目を挙げました。「病院経費の50%以上は人件費」「経営目標は患者を治すこと」「治すこと(治療成績)は、治し方或いはそのプロセスで評価」「理念は“患者目線”など、多くの病院で酷似し、しばしば額に入れて飾る物になっています」―など。従って、最大の経営資源の人材の質を高めて、効果的に運用するには、「ブランドになろう!」との意識が必要と、提起しました。


 “ブランド”病院とは、として以下の例を挙げました。歴史・伝統の視点では、古くからある欧米の病院、技術力(診断・治療・体制)では、ナショナルセンターや大学病院。設立目的では、国立病院、日本赤十字病院、恩賜財団済生会、宗教法人、自治体病院、労災病院、社会保険病院などがありますが、「ミッション、ブランドが明確でなくなってきている」とも言えます。




―集中と選択で診療機能を再編~ブランディングを意識―


 そして米延氏は、勤務していた病院(520床、平成13年から副院長、平成21年から25年まで院長)での経験談を紹介しました。就任時に抱いた危機意識を洗い出し、改善策を講じました。

  • 借金⇒組織全体の借金として割り切る
  • 医師不足⇒勤務したくなる環境づくり
  • 自信不足⇒スタッフのベクトルを同方向に合わせ、プライドを育む
  • 転勤族⇒病院への愛着心の注入

加えて、何よりもブランディングとして目指したのは、「診療機能の明示」だという。つまり、何の診療をして、何はしないか―集中と選択による診療機能の再編成(医師の志向・特性を分析)によって、24の診療科を類似機能別にグループ化して6つのセンターに集約しました。その結果、質が高まり、救急隊や連携医療機関など外部からの信頼度が増し、「免疫疾患センターなどブランドになりつつあり、財務指標も改善されました」という。



―キュアとケアの複合時代~高齢化対応―


 一方、今後の医療のあり方について、高齢化社会によって「医療のパラダイムシフトが起きます。キュアとケアを複合させる時代を迎えています」と指摘しています。医療が未発達の時代はケア主体、医療進歩によってキュアの時代を経て、今後介護支援を要する人口が増えるのに伴い、「キュアとケアを複合、チーム医療がますます重要となります」と指摘しています。そのなかで、「プロ意識を育み、プライドを持って自らブランドになることを目指して欲しい」と受講者を激励しました。



―ブランドは結果、ブランディングは構築・育成―


 中西氏は、まず初めに“ブランド”と聞いて、「何をイメージしますか」と受講者に問いかけました。何人かから、国内、海外の有名なメーカーや商品名が挙がりました。ブランドとは、との問いには定義は難しいですが、「語源は牛の焼印であり、区別するためのマーク」だと、説きました。

 そして、「ブランドとブランディングの違いが重要で、ブランドは顧客の頭に残る『結果』であり、ブランディングは作って、育てていく『プロセス』です」と述べました。「ブランディングには経営資源の投入という投資も伴い、そのための判断も必要」という。医療のブランディングについては「これまではあまり意識されていないのではないでしょうか。これからの問題だと思います」と述べ、他の業界でのケーススタディーを参考として挙げました。




―差別化ポイント、こだわりを伝える―


 中西氏はブランドの例として、語源に絡めて“米沢牛”を挙げました。日本三大和牛としてブランド化されているものの、なぜ評価され、高価なものとして取引されているのか。消費者には、ほとんど知られていません。「山形県の置賜地方(3市5町)で、月齢32ヵ月以上など一定の基準を満たした牝牛」という定義はありますが、その内容や意味するところ、こだわりは十分に伝わっていません。ブランド化しているというのは「結果」です。和牛の競争も激しくなっているなかでは、しっかりとその差別化ポイントを伝えていくことが必要で、これこそが「ブランディング」です。



―小売りの知恵、流通業の工夫~サービスで差別化―


 ブランディングが必要とされる一つは差別化のためです。様々な業界で、顧客接点を強化するためにブランディングが進められています。その場合、イメージだけでなく、実体としての『ファクト』が重要です。

例えば、最近の自動車ディーラーや銀行の店舗では、「小売りの知恵、流通業の工夫が導入されています。商品で差別化がしにくいため、接客の方法、相談コーナーの机・椅子の配置、ポスターの掲示、パンフレットの配置といったサービスなどのソフト面で差別化していく時代になっています」と説明。知恵の積み重ねによってサービスを向上させる行動として「ありたいサービスを決めて、ノウハウを貯めていく。そして、お客の声は財産です。アンケートだけでなく、ヒアリングを含めてお客の声の集め方が大事。それによって、新しい商品、サービス、売り場が生まれている」という。病院に関しては「リアルなお客さん体験ができていないので、気づかない、見逃している部分があるのでは」と指摘しています。



―価値のすり合わせ~ブランドの本質―


 ブランドの本質は「きっちりとお客に向き合うこと」だとして、サービス業としての病院を捉えると「お客(患者)さんの視点で見て、考える姿勢・行動、自らの顧客体験が大事です。参考にするのは皆さんが行っているコンビニの店舗であったり、街中の様々なお店にあります」という。患者さんが病院に対して見出す価値はいろいろあるでしょうが、「価値は何なのか。診療を終えてどう感じるのか。病院が提供する価値と患者が感じる価値のすり合わせが“ブランド”」と、結びました。

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