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医療マネジメントセミナー(平成26年度第4回)~組織の変革を図る~

「組織の変革を図る」
第4回医療マネジメントセミナー


 滋慶医療科学大学院大学と滋慶医療経営管理研究センター主催による「医療マネジメントセミナー(平成26年度第4回)」が7月13日(日)に、大阪市淀川区の同大学院で開かれました。河口豊・同大学院教授(以下河口氏)は「医療再生のための建築デザイン」と題して、正木義博・恩賜財団済生会神奈川県支部長(以下正木氏)は「医療組織の変革」と題して、それぞれ講演を行いました。




―建築抜きに、医療の再生はありえない―


河口教授

 河口氏は、建築計画学、病院管理学を専門として、数々の病院建築に関わってきました。その経験から、「建築によって医療の再生はできないが、建築抜きにして医療の再生はありえない」というのが持論で、病院の施設環境と診療・療養環境の関係について、国内外の病院の例をスライドを使って、最適空間について説きました。




―適切な空間と医療サービスの提供―


授業風景

 医療を取り巻く環境は大きく変化していますが、“医療の再生”について、河口氏は「患者と医療者の双方が納得する医療活動が円滑に続くこと」としています。そのためには、患者と医療者は対等な立場で、医療者は患者から十分な情報を得て、的確な診療を提供し、患者が早期に回復することが条件だという。
これによって、『患者は適切な空間と医療サービスの提供を実感』できます。
その結果、患者は医療者に心を開き、「医療に受身ではなく、積極的に参加できる」。まさに『建築デザインが医療再生に貢献できる』というわけです。つまり、「空間によるストレスを来たさない」。病気によるストレスはやむを得ないかもしれませんが、『施設環境から来るストレスをいかに排除するか』が問題となります。




―キュアのケア化~アメニティ空間―


 高齢化社会の進展によって、医療のあり方も大きく変わろうとしています。かつては、診療は診察と治療が主体でしたが、今後は予防―診察―治療―リハビリテーションということで、看護は患者さんの世話が中心となります。従って、「キュアの場のケア化が進んでいく」という。このため「環境の面から一般社会での日常生活性を確保するアメニティ空間が重要」と指摘しています。
欧米や国内の病院の中には、「病室にサンルームがあってベッドから離れて休む。木のぬくもりがある放射線治療室。手術室に窓があって、長時間の手術者のストレスを緩和する」など、患者、医療者の緊張感を和らげる対策を講じています。患者のストレスをなくすのは当然のこととして「職員の士気を高める空間をつくるのも大事なこと」だという。




―複合都市“ホスピランド”―


 また、団塊世代の後期高齢化など、超高齢化社会に向かって、「病院のデザインは都市のデザインであり、医療と介護の連携、障害・福祉機能を含めて、日常生活をも支援する拠点として、傷病対応の医療をベースとした複合都市“ホスピランド”に向かう」と予測しています。
(注)ホスピランド=河口氏によると、コンパクトシティの中に計画される病院、介護施設、商業施設、行政施設などが揃ったワンストップの拠点。




―ビジョン策定による行動計画を立案―


正木氏

 正木氏は、かつて事務長として勤務した病院で、院長とともに自ら取り組んだ改革事例をもとに、「病院の組織づくり」について説きました。

 その病院では、当時(20年ほど前のこと)、病院の方針や事業計画が不明確、職員に対する情報公開はほとんどない、職員の教育制度がない―などといった状況でした。

 そこでまず取り組んだのが、「ビジョン(3ヵ年)を策定して、具体的な目標を定めた行動計画を立てた」。「日本一の急性期病院を目指して」のビジョンのもと、患者サービスの徹底、地域への貢献、組織の整備、経営基盤の確立、働きがいのある職場づくり―など11項目を掲げたという。これによって、職員の不安やネガティブな意識を払拭して、「職員のベクトル合わせ」に徹したという。そして、人事制度、教育・研修制度、評価制度などを次々と導入。とりわけ重視したのが、『行動計画書』で、「文字にすることで、責任感が生まれた」という。




―組織の基盤を固め、新たな組織風土を構築―


授業風景

 いわば、組織としての基盤を固めたわけで、改革によって、新たな組織風土を築いていったという。その後のビジョンは「新たな医療価値の創造を」などで、質の視点(安全・安心な医療の提供、治療成績の向上)では、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点―を定めました。財務の視点では、組織成長のための利益確保―といったように、目的を明確にしました。




―患者さんとの最初のコミュニケーションが大事―


 例えば、「患者さんサービスの強化」では、看護師による相談受付を設置、「患者さんを温かく迎える意味で、情報提供など最初のコミュニケーションが大事」だという。また、患者さんのための「各種の情報誌」を発行、同時に「疾患説明書」「検査説明書」などの充実に力を注ぎました。




―クリニカルパスで多くの効果―


 また、クリニカルパスの作成・工夫改善によって、患者さんへのインフォームドコンセント(顧客管理)、職員間のナレッジマネジメント(組織管理)、医療プロセスの標準化、コメディカルの業務改善、病床の効率的運営(業務管理)、医業収益の増加(財務管理)―など「多くの効果を生んだ」という。


 一方、比較的早い時期(平成4年)に「病診連携科」(現在は病診連携室)を設置、地域の外部機関との「医療ネットワークの構築」など、現在は地域医療連携の強化に取り組んでいるという。


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