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第9回 医療の質・安全学会~本学発表レポート②~

ポスター全体医療の質・安全学会主催による「第9回学術集会」が11月22日(土)から24日(月)まで、千葉市の幕張メッセで開催されました。今回のテーマは「患者本位の質・安全を追求する 21世紀医療システムの構築に向けて」。滋慶医療科学大学院大学の教員・院生は一般口演で6件、ポスター発表で11件、国際学会では4件、合計21件を発表しました。今回はポスター発表の11件について、演題と要約をレポートします。

「委員会(チーム)の壁を越えたコミュニケーションスキルトレーニング“SBAR”講習会を開催して」                            林知江美さん(1期生、看護師)
林さん医療安全推進委員会の提案で、緩和ケア委員会と共同で、テーマにある講習会を実施、5職種39名が参加した。「SBARを使って簡潔に報告する習慣をつけたい」「他職種とのグループワークがよかった」「体験型で分かりやすい」など効果があった。部署での実践にまで繋がり、チーム間の良好なコミュニケーションが期待できる。

 

 

「危険予知トレーニング実施前後の安全意識」  福田将誉さん(1期生、臨床工学技士)

福田さん病院看護局の各職場での推進リーダー、主任、師長に、危険予知トレーニング(KYT)の学習会を行い、5ヵ月間に各職場で月2回、KYT基礎4ラウンド法 を実施した。実施前後に医療における安全文化の調査を行い、103名から回答を得た。肯定的回答割合の比較では、経験年数の少ない職員では低下が大きく、 12因子の5段階尺度点数の前後差の合計点数の比較ではバラつきがあるため、要因の分析が必要。それに対応したKYTを行い、安全文化の向上、医療事故の 未然防止が課題である。

 

「チームSTEPPS導入研修と受講者の反応」   松川訓久さん(1期生、理学療法士)

松川さん医療安全管理委員会の下部組織として「チームSTEPPS推進委員会」を2014年度に発足。導入研修を行い、368名が参加、334名の回答を分析した。回答によると「チームSTEPPSを広めて、安全で働きやすい環境を目指す」「メンタルモデルについての話でコミュニケーションの必要性を学んだ」など。参加者の多くがチーム医療の重要性を学ぶ必要性を理解していた。医療の質や患者安全の向上には、チームとしてのコミュニケーションの改善が必要だと気づいていた。今後は、具体的な実施の指標を明確にするのが課題だという。

 

「新人看護師における注意能力のメタ認知:看護師経験及び教示の影響」                                                         根師由佳里さん(3期生、看護師)

根師さん医療の質・安全を考える上では、発生したエラーの検出・修正が重要となる。エラーを検出する上で重要となる要因の一つに自己を客観視する能力(メタ認知)がある。
そこで本研究では新人看護師(対象41名)が自己の注意能力についてどのような認識(注意範囲のメタ認知)を持っているかを明らかにすることを目的とした。注意範囲抽出課題の成績を、1回(現在の自分)、2回目(3年後の自分を想像して)、3回目(注意機能の制約に関する10分程度の講義受講後)で比較検討した結果、2回目、3回目は1回目と比べ、注意の焦点の数が有意に増加した。これらの結果は、新人看護師は臨床経験を積むことによって、より多くの焦点化した注意が可能になると考えていることを示唆している。また、注意機能の制約を知ることで、その制約を補うために、さらにより多くの領域に注意を配ろうと考える可能性が明らかとなった。

「A県下の中小規模病院(200床以下)におけるヒヤリ・ハット体験実態」                                                   中野順子さん(2期生、大学教員)

中野さん中小病院におけるヒヤリ・ハット体験を全国300床以上の病院の調査と比較、その特徴を明らかにした。A県下、46の中小病院の看護師386名から回答を得た。体験の頻度は「時々或いはよくある」が80%以上で、「あまり或いはほとんどない」は18%。90%以上に事故報告の仕組みがあった。大規模病院と比較して、本調査で上回ったのは「情報の記録・医師への連絡」が6倍、「患者・家族への説明・接遇」が4倍など、医師や患者・家族との関係や療養上の世話に関することが多く、中小病院の特徴を捉えた医療安全対策の充実が必要。

「臨床看護師のヒヤリ・ハット体験報告に対する心理的抵抗感と影響する要因」                                 中野順子さん(2期生、大学教員)
上記の調査をもとに、ヒヤリ・ハット体験の報告に関して、看護師の心理的抵抗感と捉え、安全文化の醸成への示唆とする。抵抗感は「少しある」が43%に対し「あまりない」は35%。報告については60%は「意義を理解し抵抗感は小さく、報告する」。ただ「意義は理解し抵抗感も小さいが、行動できない」が16%あり、何らかの阻む要因があると考え、同僚間の良い関係性や自立した看護ケアの遂行が報告に関連している。安全文化の醸成には、これら影響要因に焦点を当てた対策が必要。

「血液透析装置のインターフェースの機能とその利用状況を調査して」                                        藤井耕さん(3期生、臨床工学技士)

藤井さん医療機能評価機構によると、血液浄化療法に関するヒヤリ・ハットは61%が装置に関連する。そこで、4社11機種のインターフェースの機能を調査した。新しい機種ほど液晶ディスプレー内の表示項目、操作項目が増加、操作が複雑になっている。しかし、1万6千件の操作ログ解析では、透析中の操作は23%で、ほとんどの操作は治療前後に行われていることが明らかになった。利用状況をさらに分析するとともに、同装置を安全に利用するため、利用者の立場で機能を評価することが重要。

「月経に関するセルフケア行動と看護の安全性との関係」  真砂由紀代さん(3期生、看護師)

P1010623月経周辺期症状の集中力・判断力の低下と医療の安全性に関して調査した。大阪府下の病院に勤務する20~40歳代、245人から回答を得た。月経周辺期症状では、痛みが最も高く、次いで水分貯留、行動変化で、集中力の変化は比較的低かった。看護の安全性については、周辺期より周辺期以外が高く、周辺期にインシデント経験がある人は17%。周辺期は看護の安全性が低く、自ら安全を意識して業務を行い、他者への確認行動も推測されるが、環境への視点が低いことが問題。

「更年期にある看護師の更年期障害と医療の安全に関する研究」  嶋田洋子さん(3期生、看護師)

嶋田さん看護師の更年期障害が医療の場で潜在するリスクとなり、セルフケア及びサポートとの関係を明らかにした。近畿地区の病院に勤務する40~60歳で更年期症状を有する看護師11名を調査。心身の不快症状が潜在リスクになっているが、思いをオープンにできない。不安な心理状態と重なってインシデントの発生につながっている。自分なりにバランスをとるセルフケアを行っているが、心身調整の支援、支え合える職場を目指す協働体制作りが急務。

 

「訪問看護師が受ける苦情と対処行動の選択に関する研究」  井上奈美江さん(3期生、看護師)

井上さん3か所の訪問看護ステーションで、看護師7名にグループインタビューによって体験した苦情行動を聞き取った。対処行動のスキル向上が目的。92例を収集。コミュニケーションで生じた誤解、気遣いの不足、マナー・態度、専門用語の説明不足、知識・技術不足の不満などに分類される。苦情の多寡は個人差が大きい。「自分に非がない」と思うには「療養者との価値観のズレ」の場合が多く、「対応すべきと思わない」人もあり、看護の質の低下につながる。どの苦情かの類型に当てはめて、適切な対処行動が望ましい。

 

「医療事故の発生を予測するためのヒューマンエラーの分析―重大医療事故裁判例の分析から―」                                    岡耕平 専任講師
岡先生
重大医療事故の裁判例を分析して、通常業務から事故の生起を予測する指標を見出すのが目的。事故対策が浸透していない時期と複数の安全対策にも関わらず生じた事故の刑事裁判例を比較分析。対策の有無に関わらず、手続き中に多くのミステイク(意図間違い)とバイオレーション(通常手続きの逸脱)が含まれることが判明。近年、通常業務をいかにして事故なく維持するかという“レジリエンス”が重視されている。その観点からは、エラー生起条件を制御するのが重要。しかし、バイオレーションでは一定時間内に遂行する課題が多く、制御が困難。通常業務におけるバイオレーションの数は事故の生起を予測する指標となる。

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