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第9回 医療の質・安全学会レポート③ ~医療の質・安全国際フォーラム~

武田学長がコーディネーターを努め、「ITと医療安全」で活発な論議               ―医療の質・安全国際フォーラムで―
武田学長①(編集)第9回医療の質・安全学会学術集会(11月22日-24日、幕張メッセ)では、International Forum on Quality and Safety in Healthcare,Japan2014「医療の質・安全国際フォーラム ジャパン2014」が同時に開催されました。

 

武田学長③国際ワークショップ1(医療の質・安全国際フォーラムと国際医療情報学連盟・IMIA・医療安全情報学ワーキンググループとの共催)では、「情報技術(IT)と医療安全」をテーマに、武田裕・滋慶医療科学大学院大学学長のコーディネートで活発な議論がかわされました。その内容を紹介します。

 

1. 地域連携における医療の質向上のためのデータ分析法
アトリウス地域医療グループのジョー・キムラ氏とブリガム&ウイメンズホスピタルの市原直昭氏による講演。                                            アトリウスヘルスは、ACOと呼ばれるアウトカムに対する説明責任を持って医療の質向上と効率化を目指す、新たな統合型医療提供サービスシステムのひとつです。マサチューセッツ州ボストン周辺で6つの病院群がグループを形成して1100人の医師を擁し、110万人の患者に医療サービスを提供しています。
ここではITを活用し、Eメールやビデオを駆使して多職種による効率的なセルフケアを実施しています。たとえば地域のぜんそくや腎不全、認知症などの患者を登録し、IT端末から発作や症状悪化に先行した情報を収集して速やかなケアにつなげたり、膨大な行動データから発作の傾向を分析して、リスクを予測し早期予防する活動を行って、医療費低減と質の向上を実現しているという事例が披露されました。医療の質とコストの透明性が求められる時代でありITによるデータ活用で積極的な健康管理を行うべきだという提言でした。

2. 患者安全を確保するための生涯一カルテへの医療文書管理システム(DACS)応用
武田学長による講演。                                     近年電子カルテが普及してきたが、システム更新や地域連携の際には情報の断裂がしばしばおこり、スムーズな利用を妨げています。医療の質の向上には、紙カルテを電子媒体に記録しただけの狭義の電子カルテに留まらず、部門に局在する処方や画像のデータ、紹介状や同意書などの一次情報を含めた総合的な生涯カルテが整理・統合され、いつでもどこでも閲覧できるシステムを構築することが理想です。   大阪大学病院で開発された先行事例として、広範な情報を集積したDACSシステムが紹介されました。フロアからの質問に対し「情報の相互利用のための標準化には、インフラ整備を含めてまだ解決すべき点がある」とコメントされました。

【武田学長の発表要旨~抄録集から】
電子カルテシステム(EPR)が普及し、患者安全に有利な状況であると評価される一方で、さらに改善すべき課題も明らかになりつつある。例えば、                          1)病院情報システム(HIS)は数年ごとに更新する必要があるが、その際データ移行が円滑に行われない事例や、他のベンダーによるサブシステムとのデータ交換が相当な困難な場合がある。      2)診療関連紙文書の電子化とその統合管理システムがなければ、分散管理かつ紙文書が原本となり、患者安全上も問題となる。                                    3)診療録の開示や証拠保全等法的な対応いおいても、紙カルテに比して不利な場合がある。     4)地域包括ケアの進展とともに、施設完結型EPRではなく、地域共有型EPRさらには電子健康カルテ(EHR)による情報共有が、患者安全のためにも重視されているが、個別ベンダーのアプリケーションソフトに依存するEPRからは、EHRの生成は容易ではない。
これらの課題を克服するために、発表者らは医療文書管理システム(Document Archiving and Communication System,DACS)を提案し、大阪大学病院で2010 年より全面稼働させた。今回は、その内容と評価、さらには地域共有型一生涯一カルテへの展望を述べる。

3. 医療安全のためのユーザビリティ手法
ビクトリア大学(カナダ)エリザベス・ボリツキ准教授の講演。                 IT化により処方オーダエントリシステムや、各種診断、調剤支援システム、書類作成システムなどが使用されるようになってきましたが、ITを利用することで誘発される新種のエラーによる危険性は見過ごせません。これらはシステム設計やカスタマイズ、現場導入の時に起こりがちです。またデータ入力の際に起こることが最も多くなっています。エラーが起きたときインターフェースに問題はないか、十分に検証する必要があります。導入テストを繰り返し行ったり、録画して問題点を検証したりするユーザビリティエンジニアリングの手法で、よりよい使用感を追及することが安全の向上につながります。    病院情報システムの構築の際には、「ベンダーにカスタマイズを求めてよりよいシステムを構築しているつもりになっていたが、標準システムを使うことにより、使うほうもシステム側もリスクが下がる」とのコメントに注目が集まりました。

(文責:滋慶医療科学大学院大学教授 大石雅子)

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