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No.11 看護の基本は「寄り添い」

教員による医療安全の提言シリーズ ⑪

看護の基本は「寄り添い」



「安全な医療-安心社会の構築-」と題して、教員による医療安全の提言シリーズを始めて10回を数えました。今回は、この間の連載を振り返って、土屋八千代教授、津田紀子教授、田村由美教授、小野摩耶専任講師の提言を中心に、「看護」の観点からまとめてみます。

 看護師は医師の指導・指示のもと、患者さんの状態を調査して、看護上の問題点や介入のポイントを把握し、個々人に合わせた介入方法を看護計画として立案します。その計画の実施内容を評価しながら計画を改善していきます。こうした一連の看護過程を展開(PDCAサイクル)させながら、患者さんにとって「最も健康的で質の高い生活を送れるように援助する」のが役割となります。

 土屋教授は「看護は患者さんの安全・安楽・自律(自立)を目指す援助が基本」と説き、看護師は「患者さんのベッドサイドケアを充実させて、患者さんが自ら安全管理できるような支援が必要」としています。
 また、看護の原点として「患者さんのそばに行って、しっかり目と顔を見て話を聴いてほしい」という。つまりは『寄り添い』であり、良いコミュニケーションは聞くことから始まるとも言えます。『傾聴の姿勢』を持って「ベッドサイドケアの充実が安全な医療の提供に繋がる」というのが土屋教授の持論でもあります。

 看護師とは別の視点から患者さんと接するのが「医療ソーシャルワーカー」です。小野専任講師は、ソーシャルワーカーは患者さんと対等な立場で信頼関係を築き、そして寄り添い「その人がその人らしくあることができるよう側面的に支援することが大事」と説いています。
 患者さんが抱える生活に関する小さな悩みや気になること、医療職者には言いにくいことにも対応できるのがソーシャルワーカーの特徴です。患者さんの気持に「寄り添って傾聴できるのはソーシャルワーカーをおいて、他にはいないでしょう」と言っても過言ではありません。

 医療分野でソーシャルワーカーは目立たない存在ですが、医師、看護師らとともに病院内連携(チーム医療)の一員として「医療安全の風土づくり」には欠かせない存在かも知れません。

 チーム医療に関して、田村教授は「多くの異なる背景を持つ保健・医療専門職が相互に作用して、総合的なケア、包括的ケアを実施することが重要」と説いています。これをIPW(インタープロフェッショナル・ワーク)といいます。今や、複雑多様化した医療現場では、複数の医療職者の協働なくしては機能しません。
 そこで、田村教授は「医療安全向上チームなど形式的にチームを作ること以上に、チームとして創りあげる〝チームビルディング〟の視点が欠かせません。メンバー個々はそれぞれの専門性に加えてチームとして働く力、つまりIPWを実践することが肝心」と考えています。

 医療現場では医療ミスを起こさないように、常に最善の医療を目指しています。「最善の医療を求めて」と題して提言された津田教授は「安心・安全な医療とは最善の医療の実現」であり、それを達成できるのは「省察的思考能力を持つ実践家」としています。
 そのような実践家を育成するために「平素からの実践教育及び安全管理教育へのリフレクション(思考のプロセスとしての省察)の導入が必須」と考えています。

 滋慶医療科学大学院大学では、一例ですがこのような考え方のもと、医療の現場や医薬品・医療機器の開発・製造企業などで医療安全を実践する専門家や教育・研究者の養成に力を注いでいます。
 この医療安全の提言シリーズは、本校の教員がそれぞれ専門分野(医学、看護学、工学、経済学、法学など)の視点に立って、意見をまとめて医療関連の方々、あるいは社会に向けて、ホームページを通じて発信しております。皆様方とともに「医療の質・安全の向上」を考えていきたいと思っております。

(文責・大阪滋慶学園顧問 越智道雄)


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