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No.14 医療安全の新しい管理手法

教員による医療安全の提言シリーズ ⑭

医療安全の新しい管理手法

滋慶医療科学大学院大学
教授(医学博士)
木内 淳子



 医療は絶対的に安全であるべきですが、医療現場の世界において、ヒューマンエラーによる医療事故を100%回避できるものでもありません。いかにしてエラーをゼロに近づけ、仮にエラーが起きたとしても「いかにして軽微に抑えるか」「どのように適切、正しく処置するか」が大切となります。その管理方法として、企業社会などで実績のある「リスクマネジメント」が医療現場でも導入され、注目を集めています。

 医療リスクマネジメントは、次の4つに分類できます。
①医療事故そのものを減少させる仕組みや、ヒューマンエラーが生じてもそれが悪い結果に結びつかない仕組みの構築、これを「医療セーフティーマネジメント」と言います。
②医療事故が起こった後に医療者としてどのように行動するべきかを研究する領域のことを「クライシスマネジメント」と言います。
③医療事故を契機として、医療紛争へと発展しないようにするには、医療者としてどのように対応するべきかを研究する領域、これを「コンフリクトマネジメント」としています。
④経営改善 医療安全にかけるコストと病院経営とのバランスを研究する分野は「ファイナンシャルマネジメント」と呼ばれています。

 本学では①セーフティーマネジメントの領域は江原一雅教授が担当し、②③は筆者が担当しております。④については経営学の教授陣が担当しています。

 医療リスクマネジメントは病院における「守り」であるといえます。つまり、クライシスマネジメントの領域で、医療事故への対応としては 真相究明、説明責任、再発防止の面から医療者として何をなすべきかについて研究します。
 また、医療紛争の防止(コンフリクトマネジメント)としては、インフォームドコンセントの在り方や日常診療の現場における医師と患者との関係の問題点について研究します。

 起こってしまった医療事故については、医療従事者が「正しい対応を行う」ことにより初めて患者・家族からの信頼を維持できます。このことによって医療事故が紛争化することを防ぎ、病院及び医療に対する社会からの信頼を守ることができます。医療リスクマネジメントは、これらのことを研究する新しい学問です。


重要ポイント
① 患者との信頼関係
② 医療事故防止
③ 医療紛争防止



木内 淳子
教授
木内 淳子 (きうち・あつこ)
プロフィール

1946年生まれ、兵庫県出身。1972年徳島大学医学部卒、医師資格取得、同年大阪大学麻酔学教室入局、2000年滋賀医科大学で学位(医学博士)取得。1989年日本生命済生会附属日生病院麻酔科部長、01年大阪船員保険病院麻酔科部長。02年大阪大学医学部非常勤講師、07年滋賀医科大学医学部非常勤講師を経て、11年本学教授。
第15回麻酔医事法制(リスクマネジメント)研究会会長などを務め、主な著書に「インフォームド・コンセントその理論と書式実例」(共著、医学書院、2005年)。


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