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No.19 患者の療養環境と職員の作業環境

教員による医療安全の提言シリーズ 19

患者の療養環境と職員の作業環境

滋慶医療科学大学院大学
教授(工学博士)
河口 豊



 医療提供の仕組みは「医療技術」と「経営手法」と「施設環境」の3分野から成り立っています。まず医療は施す人と技術がなければならず、良質な医療を提供し続けるためには経営が安定していなければなりません。しかし、場としての施設がなければ例え在宅医療であろうと医療提供は不可能です。この3本柱は医療提供のための必須条件です。

 安全な医療提供を行うための資源も同様です。安全な施設環境についてみてみましょう。施設環境については次の3つが整っていなければなりません。


施設環境としての重要ポイント
① 必要十分な空間
 部屋の面積が十分広く、よい家具があり、天井高が確保されている
② 機能的な設備
 一般的設備の他、医療的に特殊な電気や水・照明なども供給できる
③ 適切な維持管理
 医療提供に適した清掃や増設・修繕、エネルギー制御ができるなど


 では具体的に施設環境の例を見てみましょう。
 患者の療養環境においては、まず病室です。入院患者の生活の場であるとともに診療の場になります。患者間の感染を避けるためにベッド間隔を1m以上とする。転倒・転落事故はベッド周りで起きる頻度が高いので離床のための空間を確保する、またトイレへ行くときに起きる場合が多いので病室内に設けるなどトイレを近くに配置します。診療の部屋では外来診療室で家族も同席する空間が必要ですし、心電図検査のために脱衣するので温度管理やプライバシー確保が必要になります。

 職員の作業環境においては、手術室では機器を整理して置ける広さと清浄度の高い空気の給排など、十分な放射線防護、薬塵対策と薬剤ラベルがよく見える照度を確保した薬局、検査排水や排気が適切な検体検査室、温度と湿度管理が十分な調理室などがあります。

 これらは安全面だけではありません。患者のアメニテイを高めて、人が本来持っている自然治癒力・回復力を引き出す環境ともいえます。また職員の働きやすさを導き、職員自身の安全を守る方策になり、引いては患者安全にもつながる施設環境であるといえます。


マサチューセッツ総合病院B3C病棟



大阪府済生会中津病院病室


河口 豊
教授
河口 豊 (かわぐち・ゆたか)
プロフィール

 1944年生まれ、東京都出身。1967年千葉大学工学部卒、69年同大学院工学研究科修了、工学部助手、97年学位取得(工学博士・明治大学)。89年病院管理研究所建築設備部長、国立医療・病院管理研究所施設計画研究部長、98年広島国際大学医療福祉学部教授、04年同大学医療福祉学部長兼総合人間科学研究科長、09年同大学名誉教授。11年本学教授。
 (社)日本医療福祉建築協会会長、日本医療・病院管理学会評議員など公職多数。
著書に「新建築学大系31病院の設計」(共著、彰国社、2000年)、「病院管理」(共著、メディカルエデュケーション、2008年)他。


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