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③専門職連携実践(IPW)論―田村教授

『協働と実践による、患者中心の安全な医療』

田村教授 インタープロフェッショナル・ワーク(IPW)―本学の授業科目では「専門職連携実践」としていますが、「多職種協働による実践」とも邦訳されています。いまこの「IPW」が医療の質の向上、患者中心の医療安全を実践していくうえで、「チーム医療」とともに注目を集めています。IPWはまだ発展途上の学問ともいえますが、わが国ではいち早くIPWに着目して自ら学び、指導者でもあります田村由美教授(博士・人間科学)にIPWについて聞きました。


―いまなぜ、IPWが注目されているのでしょうか。

 チーム医療が提唱(1970年代の後半)されて久しいわけで、その重要性は認識していても、現実には機能していないケースがあります。言葉が先行していることも否めません。その原因は医療の専門職間の連携不足、つまりはコミュニケーション、チームワークの不足にある、といわれています。

 そこで、私はIPWを『より良い健康のための専門職の協働、専門職種間の協働実践』と訳しています。この協働と実践が大事でして、実践=行動があってこそ、チーム医療が実現するわけです。それと、(後述しますが)IPWでは実践の中でのコミュニケーション、チームワークを重視しています。こうしたことが注目されているのでしょうか。

 それに、チーム医療は医療職を中心に編成しますが、IPWは人々の健康を目指して、保健医療福祉の総合的なケアのアプローチシステムです。医療職に加えて福祉職や教育職、そのほかの関連職種も参画するのがIPWの特徴です。

―IPWにおいては、協働と実践が大事ということですが、授業の目的と進め方を教えてください。


田村教授 技術進歩に伴って高度化、複雑化する医療にあって、チーム医療は医師、看護師、薬剤師など職種の異なる多数の医療従事者が「患者さんの健康生活の質の維持・向上のために」協働するわけです。チーム医療を推進するに当たっては、医療の質の向上とも合わせて、①関係の質(相互に尊重、信頼を築く)②思考の質(気付く)③行動の質(自発的に動く)④結果の質(エラーの減少、患者満足)という4つの概念があります。この概念のもと、協働と実践を学んでいきます。

 授業の目的は“新しいチーム医療”の実践としてのIPWを理解して、患者安全におけるIPWを現実的な課題として、体験的に学習します。このため、授業の半分はグループワークによるディスカッションにあてています。幸いにも本学の院生は多分野の医療職が集まっていますので、異なる職種の人々でグループを編成しています。相互に職務の役割や責任、限界などを理解したうえで、患者さんのための医療安全という意識を統一(共有)して議論を展開します。

―授業のシラバスの中に、「実践現場に役立つIPWの知識とスキルを学習」とありますが、ここでいう知識とスキルとは、何でしょうか。

 それぞれが自らの専門職としての知識とスキルを身に付けているのは当然と言う前提です。勿論、この大学院での学びで、さらに専門性を高めることも大事です。ここでいう知識とは、チームとは何か、組織とは何か、専門職とは何か、人の行動とは、協働とは―などといった概念を理解することです。

 スキルは、例えば「傾聴の姿勢」とよく言われますが、本当に「聞く、耳を傾ける」「伝える」あるいは「書く」といった、コミュニケーションの基本を理解して、正しい行動としてのスキルを身に付けているかどうか。いわゆる“ノンテクニカルスキル”と考えてよいと思います。多職種が協働する「チーム医療」の実践においては、このノンテクニカルスキルが重要な資質、素養となります。

―最近、「医療への患者参加」も盛んに言われだしていますが、チーム医療を進める中、あるいはIPWにおいて、患者参加はどのように位置付けますか。

 当然のこと、と言ってしまうと何ですが、「医療サービスにおいては、患者さんがあってこそ」で、IPWの中では「患者さんの治療、回復、健康に向けて協働する」、「患者中心の医療の実践」を主眼としています。

 ただ、医療従事者は「何のために、仕事をしているのか」、働き方を問い直す必要があると、思っています。社会(価値観)が変わり、医療のあり方も変わる、そうしたなかで自らも変革していくべきでしょう。そういう視点から、授業の中では、自分、あるいはチームの実践行為・パフォーマンスの経験から学ぶ方法として“リフレクション”(内省、省察)を大切にしています。

―田村先生はIPWを理論構築されるとともに、教育(IPE)にも力を注がれていますね。

 医療は従事者も患者さんも「人」です。とりわけIPWを身に付けて実践する医療者の「人づくり」が大事になります。人づくりは教育に始まります。IPEでは、複数の異なる医療職者のチームづくり(チームビルディング)、それに臨床現場の現状、動向に合わせたトレーニングが必要です。特に、チームワークとリーダーシップを身に付けるトレーニングを重視しています。


IPW(Interprofessional Work)
 よりよい健康のための専門職の協働、専門職種間の協働実践、多職種協働、多職種間連携・協働。異なる学問基盤をもつ専門職が目的を共有し、相互の役割を尊重し、互いのもつ専門性を有機的に発揮すること。重要なのはIPWの後につく「Health&Welfare」であり、ヘルスを広義に捉えること。すなわち保健、医療、福祉領域におけるIPWを意味する。
【田村由美編著による「新しいチーム医療~看護とインタープロフェッショナル・ワーク入門」(看護の科学社、2012年発行)から引用】


(詳しくは「安全な医療」のNo733をご覧ください)

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