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~医療の質・安全学会で~

本学の修了生・院生、教員が研究成果を発表
~医療の質・安全学会で~

 医療の質・安全学会は「チームで良くする医療の質、質を支える安全学」をテーマに、11月23日―24日に東京・ビッグサイトで「第8回学術集会」を開催しました。この中で、滋慶医療科学大学院大学の教員、修了生、院生、17人がシンポジウムでの講演、一般口演、ポスター発表など、研究成果を披露しました。ここでは、一般口演、ポスター発表でのプレゼンテーションの一端(要約)を紹介します。

乾さん 喜田さん 吉野さん 内海さん 福田さん
乾さん 喜田さん 吉野さん 内海さん 福田さん
林さん 岡講師 飛田准教授 田村教授  
林さん 岡講師 飛田准教授 田村教授  

【一般口演】
福田将誉
(修了生)

包括分析法を用いた臨床工学技士の医療機器安全管理業務配分の最適化

臨床工学技士(CE)の手術業務の効率性を測るのを目的に、19病院を調査した。有効回答7病院のうち、3病院は最適な業務配分となっている。CE1人当たりの医療機器保有台数は平均22,5台で、他の4病院は44,9台。業務配分の最適化に向けては、CEの人員を確保して定期点検検査を増やすことで、効率的な改善が図れる。
池田 誠
(院生)

軟性内視鏡内腔洗浄における用手的予備洗浄の評価用デバイスの作成とその評価

軟性内視鏡洗浄消毒装置の用手的予備洗浄を評価する汚染モデルがないため、独自に評価用デバイスを作成した。常温(23,5℃)の水道水、温水(39℃)の水道水、中性洗浄剤を100倍に調整した温水(39℃)の3種類で評価したところ、洗浄効果は専用リユースブラシよりもディスポーザブルブラシの方が高い、洗浄剤を用いない場合は常温水の方が高いことが分かった。軟性内視鏡洗浄の質の向上や複合的汚染物の測定に役立つ。
天本 都
(院生)

産科医療補償制度の認定事例を助産師の視点で分析して

同制度の審査委員会で認定された93事例を看護やチーム医療の視点で分析。診療所の半数は助産師の配置がなく、分娩経過の観察、ケアは看護師、准看護師が行っているが、胎児健康管理で42件は判読上に問題あり。産婦が訴えた自覚や所見異常にチームで問題点を継続しているのは12件。産科医が減少する中で助産師に課せられた管理責任は重く、助産師は正常分娩だけでなく、異常を想定した実践教育が必要。診療所は看護スタッフの再教育が必要で、医師との連携基準の整備も急務。
志摩久美子
(修了生)

チームで創る医療安全に関する研究
―手術室発生事象におけるチームステップスのコンピテンシーによる分析と再発防止―

日本、米国の医療事故の発生事象の分析方法として、チームステップスの4つのコンピテンシーの視点から、報告データを分析した。根本原因として米国ではリーダーシップ、コミュニケーションが上位を占め、日本では状況モニターと相互支援の有用性が示された。要因分析にチーム力評価を加えることで、医療安全の教訓が得られる。
大西アイ子
(修了生)

エラーに気づく、気づかれる:他者のエラーに気づく個人特性の検討

看護師に「患者に実施する前に他者のエラー」について調査(回答391名)したところ、他者エラーに気づいたのは271名で、その事実を当事者に伝えていた。気づいた理由は「過去の経験によるもの」で、そのうち7割以上は「他者に気づいてもらった」という経験がある。エラー経験の蓄積によって、他者のエラーに気づく。自らを客観視する能力が影響する。
稲岡佳子
(院生)

我が国における病院PFI事業と医療の質・安全に関する調査研究

PFI事業(公共施設の建設、管理、運営の民間活用)の導入が公的病院で増えているが、問題も多い。9つの公的病院がPFIを導入しているが、2病院についてはすでに中止している。滅菌消毒、給食、検体検査業務などで、改善命令が出て、医療サービスの質、患者安全上での問題が指摘された。医療分野でのPFIでは他のケースよりも、運営会社との連携、スタッフ教育、モニタリング方法の精査などが重要となる。
内海かおり
(修了生)

組織コミットメントと介護の質に関する調査研究

「介護組織における組織コミットメントは、介護の質に影響を与える」ことを仮説に立てて、大阪府内の32指定介護事業所の職員322名に調査した。個人属性、組織コミットメントの情緒的、存続的、規範的の3つのカテゴリーなどを聞いた。主観的介護の質では、「情緒的コミットメント」「医療資格の有無」「高齢者が好き」で有意があり、客観的介護の質では「情緒的及び存続的コミットメント」「医療資格の有無」で有意があった。
林知江美
(修了生)

病院看護師の深夜勤における作業実態と生理的指標の関連

夜間作業のエラーは深夜2-4時に多い。急性期病院で3交代勤務の看護師21名を対象に、心拍計と運動動作計を装着して測定した。午前零時半からの勤務前半は低値だが、後半は高値となる。1時半-2時半に「医薬品の点検管理」が行われている。心拍数は低値を示しているが、反生理的状態での作業を示唆している。医薬品の点検は医療安全の観点から、時間帯のリズムを考慮して、作業時刻や内容を検討する必要がある。
武田 裕
(学長)

医療文書管理システム(DACS)機能付加による入院イベント関連文書の量的監査とその意義

紙媒体と電子媒体の診療記録を統合管理する「医療文書管理システム」(DACS)は、大規模病院を中心に普及しつつある。付加機能として、診療記録の量的監査を支援するシステムを開発し、実用化を目指す。入院、手術、退院などイベントごとに、必須文書のプロセス進捗が患者別・部門別管理画面から、見える化でき、診療報酬請求上の必須文書が退院までに確認できる―など量的監査の必要条件を満たす、と判断された。課題もあるが、初期モデルとなり得る。
【ポスター発表】
星加静枝
(院生)

病院と訪問看護ステーションの連携の実態と情報共有に関する研究

訪問看護ステーションを通じて、病院と在宅療養の関係での問題点を調査した。大阪府のステーションの管理者85名から回答を得た。多くは会議開催など好ましい実態だが、病院内で伝達すべき情報が統一されていないなど問題もある。退院支援システムの構築や病院と在宅側の情報共有の標準化などの体制を整備する必要がある。
田村由美
(教授)

近畿圏救命救急センターICUに関わる専門職・非専門職の組織風土とチーム風土の自己認識とその関連

組織での伝統性と環境性の認識の高低がチーム風土に影響する。特にチームワークとして「参加と相互作用」「解決への意欲」が関連している。ICUに関わる専従と非専従の職員を対象(回答408名)に調べた結果、専従の方が有意に高い。ICUの安全風土には組織管理における伝統性と組織循環性のバランスとリーダーシップの発揮が重要。
喜田裕也
(修了生)

医療事故調査63事例(71報告)からみる反応性の分析と検討
~院内事故調査を中心として~

事故の再発防止のため、WHOは非懲罰性、分析、反応性など8項目を挙げているが、71の報告で全てを満たしているのはなかった。調査側の勧告内容と医療側の対応の両面が関与する反応性に着目すると、医療側による防止策の記載、再発防止の報告が少ない。今後は事故調査を受けて、医療側がどのように変わったか、肯定的な反応性についての記述が必要になる。
吉野眞美
(修了生)

看護師等が刑事責任を問われた事故の根本原因分析とその対応策

1999年―2010年で、看護師等(助産師、准看護師を含む)が関与した裁判例(31件)の中で、注意義務違反で公判となった6件の根本原因を分析した。「ヒューマンファクター/訓練」「環境・設備機器」「規則・手順・方法」「防止策」に関する原因が多い。背景には個人というより、環境要因に問題があり、様々な潜在的要因が重なって、ヒューマンエラーを誘発している。事故防止には「医療環境を整える」ことが必要。
乾 悦子
(修了生)

近畿地区の中小規模病院における5S活動の現状と課題

5S活動について、60病院の413名から回答を得た。5Sの認知度は、安全管理者100%、師長87%、スタッフ56%で、活動しているのは半数。師長は清掃・清潔、スタッフは整理・整頓を意識している。大半が「医療安全との関係性がある」と認識している。活動の主体となるスタッフへの5S教育、それに病院長との連携によって、組織全体で活動を推進することが大事。
中山昌美
(修了生)

飛田伊都子
(准教授)

看護師の離職意向に関連する要因の検討

日本看護協会の調査(2010年)によると、常勤看護師の離職率は11,2%。看護師(回答347名)に、「辞めようと考えたか」について聞いたところ、「月に2回以上―毎日」と回答した離職意向あり群は108名(31,1%)、「年に数回―ない」という離職意向なし群は230名(66,3%)。離職意向の有無については「勤務日調整」「業務負担」「協力支援体制」「仕事満足感」が関係している。休日要望、業務負担の軽減、協力支援など、組織的取り組みが課題。
岡 耕平
(専任講師)

看護師等の刑事裁判例における事故背景の分析
~レジリエンスの観点から~

医療事故裁判例(31件)の中から6件について、生じたエラーを分類し、状況背景と対応させることで、レジリエンス(活動維持)の観点から医療安全を考える。ヒューマンエラーについて、スリップやラプスはほとんどなかった。単純な工学的工夫では事故を防げない。ミステイクとバイオレーションが多いのは、実作業が個人の状況認識と効率的行動に依存したシステムになっている。作業手順や労働環境の整備が必要。

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