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吉野さん(1期生)の論文が医療の質・安全学会誌に掲載

―事故の背景にある環境問題の解決が重要―



 滋慶医療科学大学院大学の修了生・吉野眞美(よしの・まさみ)さん(医療安全管理学修士、1期生)の論文が「医療の質・安全学会誌 Vol.No.4(2013)」に掲載されました。演題は「看護師等が刑事責任を問われた事故の根本原因分析―そこから学ぶ事故防止策の不備の検討―」(同大学の木内淳子教授、岡耕平講師との共著)で、事例分析によると『事故は医療現場における“潜在的要因”が重なり合ってヒューマンエラーを誘発している』ことが判明した。

 看護師等による刑事裁判例では、背景を含めた分析や事故の根本原因の研究は不十分だった。そこで、吉野さんは事故の直接的原因ではなく、潜在的要因の医療環境の欠陥に注目して、環境システムの観点から対策を検討した。

 1999年から2010年までの看護師等が関与した裁判例31例中、注意義務違反による公判事例の6例(薬剤4例、医療機器1例、手術1例)を根本原因分析手法にて分析した。その結果、「訓練」「環境・設備機器」「規則・手順・方法」「防止策」に関する案件(5例)が最も多い。次いで「疲労・勤務体制」(4例)で、注意義務違反の背景には、『環境要因に問題がある』ことが分かった。

 看護師等が刑事責任に問われた場合、知識や確認不足など直接的原因が争点となる。しかし、今回の分析によると、「医療組織の潜在的な要因が重なり合って事故に至っている」ことが明らかになった。
 刑事事件となった医療事故は、医薬品の取り間違い・過量投与、与薬方法・ルートの間違い、異型輸血など「単純ミス」が多い。その背景には、医療機関の組織的問題、システム、労働環境の不整備などがある。

 従って、個人だけに責任を追及して懲罰を科しても、「医療事故の再発防止効果は薄い」。個人を責めても、事故の背景にある複数の要因が解消されないと、同じ過ちが再び起こることになる。そこで「本来の原因である医療機関のシステムや医療機器・医薬品の問題、職員の労働条件、職場の環境など事故の根本的な原因を明確にして、その原因を見直し、解決しないことには、医療事故は減少しない」としている。
 そして、再発防止の観点からは「ミスを犯した個人ではなく、ミスを犯す人間の特性やミスを誘発した環境に焦点を当てて」、『より安全な医療システムを構築する』ことが重要だと指摘している。

 本研究によって、事故の根本原因となる要因を明確にすることができたが、事故に関わった看護師等のエラーそのものを分析するには不十分であった。今後は「人側の要因として看護師等によるエラーを認知心理学の分野から分析して、どういったエラーから事故が誘発されたのかを究明していきたい」と、吉野さんは今後の研究課題を挙げている。

 吉野眞美さんは、今回の論文テーマを選んだ理由として「医療事故が起きた場合、多くは最終行為者の医師や看護師が刑事責任に問われています。刑事裁判では看護師の確認・注意不足など直接的原因のみを取り上げて刑罰を科していますが、本当にそれだけが原因なのか」と疑問に感じて、調査・研究、分析を行ったという。


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